投資コラム

稲さんのよもやま話【8】 半沢直樹だけじゃない現実のTOBの話。ニトリはお値段以上の買物ができるのか?

皆さんは「半沢直樹」のドラマは見ていましたか?
第2シリーズでは、半沢直樹は銀行から証券会社に出向になっていました。
そこで、企業の買収問題に関わるという展開がありました。
現実の株式投資の世界でも、最近、企業の買収に関してドラマのような展開が起こっています。

1つは、外食産業のコロワイド(牛角やかっぱ寿司などを経営している会社)が大戸屋に買収を仕掛けました。
大戸屋は皆さんも一度ぐらい食事に行ったことがあるかもしれません。

この買収は、大戸屋を創業した社長が50代で急死したところから話は始まります。
亡くなった後、社長の従弟が社長を引き継ぎ、同時に一般社員であった元社長の息子が常務に昇格。
しかし、新社長は就任後、すぐにその常務を海外に転勤させるのです。
それを不服に思った常務とその母(前社長の妻)。
前社長のお骨と遺影を持って、新社長に抗議に行くという、、ドラマのような事件が起こります。
結果、常務は会社を去ることになりました。

さて、会社と去ったとはいえ、元社長の息子と妻ですから会社の株式を20%弱保有していました。
2人はこともあろうに、その株式をコロワイドに売却したのです。

コロワイドは様々な飲食店を買収しながら大きくなってきた会社です。
この株の取得をきっかけに、大戸屋の買収に乗り出すことになりました。
その方法は、半沢直樹でも出てきたTOB(株式公開買付け)。
コロワイドはTOBによって大戸屋の株を買い集め、経営権を得ることを決めたのです。

TOBというのは、「この会社の株式を、この期間に、これだけの数量、この価格で直接買います」
と宣言して売り手を募ることです。
買取価格は、市場価格より高く設定されますから、株を持っている投資家は喜んで手放す人も多いでしょう。
(実際には発表された時点で市場価格がほぼその価格まで上がります)

TOBには、2パターンあります。
1、買収される企業とする企業が合意のもとに行われる「友好的TOB」
2、買収されたくないのに乗っ取られる形になる「敵対的TOB」
大戸屋の場合、後者にあたります。

敵対的TOBでは、仕掛けられた買収される会社はそれを阻止しようとします。
その方法として、買収される会社と友好関係にある会社が、さらに高い値段でTOBを仕掛けてくることがあります。
それがドラマで言われていた「ホワイトナイト」です。
しかし今回は、ホワイトナイトは現れず、結果的にコロワイドのTOBが成立。
新役員の一人として会社を去った前社長の息子が就任することになりました。
コロナの影響で飲食店業界全体が厳しい中、大戸屋がどのように変わっていくのか注目しています。

もう1つ、起こっているのは島忠というホームセンターを運営する会社のTOBです。
これは、先にDCMという会社(いくつかのホームセンターが合併してできた会社です)がTOBを仕掛けていました。
それに対し、ニトリがそれよりも高い値段でTOBをかけてきたのです。

先に仕掛けていたDCMのTOB価格は、1株4200円。
それに対して、後からニトリが提示してきた価格は5500円。
もともとのDCMが友好的にTOBしていたのに、ニトリが敵対的TOBを仕掛けた、と言われています。
ニトリは、ぜひとも島忠を手に入れたかったのでしょう。

私は社長ウォッチングが趣味?なのですが、ニトリの創業者、似鳥昭雄会長は好きな経営者の一人です。
ときどき日曜日の朝のテレビ番組「がっちりマンデー」にゲストとして出演されていますが、
愛嬌のある、でも経営者としてはとても凄腕の人物です。
だから「似鳥会長ならいろいろ考えがあってのことだろう」信じています。
でも、どうでしょうか?
〝お値段以上″の買い物になることを願っています。