投資コラム

稲さんのよもやま話【82】 大量保有報告って何?

個人投資家井村俊哉さんがある会社の株を5%以上保有したことが話題になり、その会社の株の動きにも影響を与えています。井村俊哉さんは元々お笑い芸人でしたが、芸人の収入では食べていけないので生活費を稼ぐ目的で株式投資を始めました。ところがどうやらお笑いより株の才能のほうがあったようで、今や株資産は14億円以上と言われています。もはや株芸人というより個人投資家として有名ですが、その資産の大半を投じてひとつの会社の株を大量に購入したのです。

普通はある会社の株をたくさん買っても、特に自分から言いふらさなければ、どれぐらい買ったかわからないのですが、株式投資の世界では、ひとつの会社の株を5%以上保有すると財務省に報告しなればいけないという決まりごとがあります。そしてその報告は誰でも見られるように公開されるのです。さらにその後保有割合が1%以上減ったり増えたりした場合にも報告が必要です。

資産が何十億もあるような個人投資家が、比較的小さい会社の株を大量に売買すると、今回のように大量保有報告書を出すことは時々ありますが、今回は一芸能人として知名度のある投資家だったので、騒ぎになっているのですね。自分が大量に保有していることが公表されることで、他の投資家が集まってくることを期待して意図的に大量に買ったのではないか、などいろいろな憶測が飛び交っているというわけです。

ちなみに今回大量保有報告書が出た会社は(1518)三井松島ホールディングスという会社です。会社設立が1913年、上場が1961年と大変歴史のある会社ですが、時価総額(発行済み株式数に現在の株価を掛け合わせたもの)は200億円程度と比較的小さめです。石炭の輸入販売がメインの事業です。脱炭素時代には石炭火力発電は減らしていかなければならないものですが、そのため最近は石炭以外の事業の割合も増えています。

井村さんがどのような意図でこの会社の株をそんなに大量に買ったのかはわかりませんが、先週第二四半期の決算が発表されたあと株価は大きく下がり、またその後の数日間は上がってきています。井村さんが大量保有報告書を出さなければ、そんなに動きが激しい銘柄でもなかったと思うのですが、しばらくは不安定な動きが続くのかもしれませんね。