投資コラム

稲さんのよもやま話【50】 投資家は実は大暴落を喜んでいる?

「株式市場が大暴落!」と聞くと、投資をしていない人で株にネガティブな感情を持っている人は「それみたことか。株なんてギャンブルみたいなもの、やるもんじゃないよな。やっている人、かわいそうに」と、ちょっと優越感も感じながら同情していることでしょう。

ところが、案外投資家は暴落を喜んでいたります。まず信用取引を利用して短期売買をしているトレーダーは空売りという方法で株の下落で儲けることもできます。

株は安い時に買って高くなったら売って利益を出すと思いますよね。実際それが一般的な利益の出し方です。ところが信用取引では最初に売ってから買い戻すということができます。

ちょっとわかりにくいのですが、証券会社からお金ではなく株券を借りると思えばよいでしょう。たとえば今株価1000円の株がきっと近いうちに600円ぐらいまで下落するだろうと自分が予測しているとします。そこで証券会社からその株を1000株借りてすぐに売ります。借りた株は100万円の現金になります。そして1週間後に予測通りその株が600円に値下がりしたらまた買い戻すのです。株価は600円なので1000株は60万円で買えます。そして証券会社に1000株の株を返します。そうして手元には差額の40万円が残るというわけです。もちろんタダで株を貸してくれるわけではないので手数料を引かれますが1週間の手数料は1000円もしないでしょう。

ですから信用取引を利用している短期トレーダーは、株が上っても下がっても利益を出すことができます。もちろん予測が当たればの話ですが。むしろ彼らが嫌うのは上がりも下がりもせず、市場があまり動かないことです。

一方長期投資家は下落で利益を出すということはありませんが、常に資産の何割かは現金で持って、大暴落に備えていることが多いものです。長期投資家にとっては業績絶好調の会社もつられて下がる市場全体の大暴落はバーゲンセールなのです。普段から分析して目をつけていた会社や、すでに持っている会社の株が実力や業績に対して安すぎるというラインにまで下がったら待機していた現金を出動させるのです。

いずれにせよ、上手に株式投資をしている人は大暴落も利用して資産を増やしています。でも、実際には、大暴落に遭遇して怖くなって、損を承知で全部売り払って株から撤退する人が数としては多いのです。そしてそんな人が周りの株をやったことがない人に「株なんて儲からないからやめた」という話をします。それで「株は怖くて儲からないもの」と大多数の人が思っているのかもしれません。