投資コラム

稲さんのよもやま話【29】 株の格言「セル・イン・メイ」

日本の株式市場も、アメリカの株式市場もこの2~3日大きく下がっています。こんな時に思い出すのが「セル・イン・メイ(Sell in May)」という株の格言。英語であることからわかるように、日本発の格言ではありません。セル・イン・メイを訳すと「5月に売れ」ということですね。この格言には続きがあって、「Sell in May, and go away; don’t come back until St Leger day.」というのが全文です。
「St Leger day.」は9月の第2土曜日で、この日にイギリスで有名な競馬レース「セントレジャーステークス」が開催されるそうです。ということは、この格言はイギリス生まれなのかもしれませんね。(今回調べるまでてっきりアメリカ発祥かと思っていましたが)
5月には株を売って相場から離れ、9月の2週目まで戻ってくるなというわけですが、なぜこのような格言が生まれたかというと、やはり経験的に5月から9月の間は株式市場が低迷しがちということが知られているからでしょう。
以前の記事にも書いたことがありますが、なぜそうなるかわからないけれど経験的にそうなりがちなことが知られていることを「アノマリー」と言います。この「セル・イン・メイ」もアノマリーなので、明らかな理由があるわけではないのですが、欧米では夏に長期の休暇を取ってバカンスを楽しむことが多いので、市場参加者が減って、売り買いが少なくなることが原因ではないかという説もあります。
だとしたら、日本市場には当てはまらなさそうなものですが、日本の株式の6割は外国人投資家が買っていると思えば、海外の市場と似たような状況になるかもしれませんね。
さて、しかしこの格言の根拠が、夏の長期休暇で市場参加者が減るということであれば、少なくとも個人の投資家が長期休暇で旅行に出かけることのできない昨年や今年はその理由にはならないでしょう。むしろ平日に仕事が休みで自宅にこもっていなければならないなら、株式投資をしている人はネットの証券会社の画面に張り付くことも増えるかもしれません。
過去10年20年を検証してもアノマリー通りにはなっていない年も多くあります。個人的には長期投資なので、5月に相場を去るということはないのですが、今年はどのような動きになるのか9月までウォッチしてみたいと思います。