前回、株主優待のお話をしましたが、この株主優待は日本特有の制度と言われています。海外でも昔は鉄道会社が株主に乗車券を配ったという記録もあり、今でも似たような制度(風習?)が日本以外にまったくないわけでもないようですが、日本では上場企業の約4割が株主優待を実施しており、株の雑誌でもたびたび特集が組まれます。個人投資家は株主優待がきっかけで株式投資を始めるという人も少なくはありません。
さて、そんな株主優待ですが、そのうちなくなるのではないかという説もあります。2020年に関してはコロナの業績不況で廃止せざるを得なかった企業が多かったのですが、それ以外にも優待廃止に向かいそうな理由があるのです。ひとつは企業が株主数を増やす必要が今までほどではなくなりそうだということ。前回の記事に書いたように、企業がマザーズ市場や東証二部から東証一部に昇格するためには、最低の株主数をクリアする必要があります。株主優待を実施することには個人株主数を増やせるという効果もあるのですが、株主数の基準が変わるのです。
現在は東証一部、東証二部、マザーズ、ジャスダックの4市場で構成されている東京株式市場が、2022年4月から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編されることになっています。
今までに比べ、昇格に際して時価総額(株価×発行株式数)の条件が厳しくなりますが、株主数の条件は緩くなります。たとえば、今までマザーズに所属する会社が東証一部に昇格しようとしたら時価総額は40億円以上でよかったのですが、新しい基準でグロースの会社がプライムに昇格するには250億円以上と大幅に条件が厳しくなります。一方株主は2200人以上必要だったのが800人以上と大幅に削減されるのです。株主優待をばらまいて一口株主の数を増やす必要はなくなったということですね。
それと、新しい分類は海外の機関投資家が日本の株式市場に今までより投資しやすくなることを狙っているのですが、海外の機関投資家のところにクオカードや食品のセットが送られるということもないでしょうから、彼らから見ると株主優待という不可思議で不公平な制度のためにお金を使うなら、その分配当金を増やしてほしいと考えるだろうと思います。つまり国際化が進むにつれ、株主優待制度は廃れていく可能性があるということです。
とは言え日本の個人投資家には株主優待はとても人気がありますし、企業によっては自社の商品を知ってもらってファンを増やす機会になることもあるでしょうし、たくさんの個人投資家が分散して株を持っていてくれると自社の株を買い占められるリスクを軽減するなどの利点もあるので、近い将来まったくなくなるということもないとは思うのですが。
そういえば、株主優待とは別に株主総会の出席者へお土産をくれる企業もたくさんあって、その内容によってはお土産目当てで株主総会に行くという人もいるのですが、こちらはコロナをきっかけに2020年はほとんどの会社で廃止になりました。株主総会の出席自体自粛を呼びかけ、インターネットでの議決権行使やオンライン参加を推奨する会社が増えています。これも以前から行った人だけがもらって不公平という意見もありましたし、費用や手間もかかることなので、コロナという大義名分ができて、内心よかったと思っている会社もあるかもしれませんね。