投資コラム

稲さんのよもやま話【22】 靴磨きの少年と株の暴落

NYの株式市場は4月16日に史上最高値を更新。日経平均も3万円近くでとどまっていますし、株式市場は今バブルな状態なのではないかと考える人もいるようです。新しく株式市場に参入する人も増えていて、アメリカではロビンフッドというスマホアプリで株式投資を始めたロビンフッターという(主に若い)投資家たちの行動が社会現象化しています。それで思い出した話があります。株式投資をしている人の間では有名な「靴磨きの少年」の話です。

株式市場は過去に何度か歴史に残るほどの大暴落をした日があります。たとえば1987年10月19日の月曜日には「ブラックマンデー」と呼ばれる世界的な大暴落が起こりました。私はなんとリアルタイムで経験しました(笑)

と言っても、まだ自分では個別株は買っていませんでした。株式投資をしている会社の上司に少し株のしくみを教えてもらっていたところでした。当時はまだインターネットなんてないに等しい時代でしたから、新聞の株式欄を毎日見ていました。そして、そのブラックマンデーの翌日の新聞の株式欄。いつもは数字がびっしり並んでいるのに真っ白だったことを覚えています。ほとんどすべての銘柄がストップ安で値がつかなかったのです。会社に行って「大変なことになってますね!」と上司に言ったら「こんな時にお金があったら買うのになぁ」と言われていたのを思い出します。

さらに歴史をさかのぼって1929年10月24日の木曜日には「ブラックサースデー」と呼ばれる米国株の大暴落がありました。大恐慌の始まりとなった暴落です。(この時はさすがに私も生まれていませんよ)

そしてこの大暴落にまつわる「靴磨きの少年」の有名な逸話があるのです。

ジョセフ・P・ケネディ(第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディの父)は有名な実業家で投資家でしたが、1928年の暮れのある日、靴磨きの少年に靴を磨いてもらっていました。するとその少年がケネディに向かって株の儲け話をしたというのです。それを聞いて「こんな少年までが株を買っているとしたら、これはもうこれ以上株を買う人がいない、ここから株は暴落する」と持っていた株をすべて売却。そうしてブラックサースデーの暴落に巻き込まれず資産を守れたという話です。

私も過去にテレビのホームドラマを見ているときに、登場人物が「私も株を始めてみようと思う」などと言って株に手を出して失敗するようなエピソードが組み込まれているのを見て「株式投資がブームになっているな。これはそろそろ売り時だな」と思ったことがあります。

長く持ち続けていれば、どんなタイミングで買っても成長している企業の株価は上がっていくでしょう。ですから皆さんのようにこれから先が長い人は、タイミングを見計らってなかなか買えないより、買った後に下がれば買い足すつもりで、まず少しでいいから買ってみることは大事だと思います。何事も始めないと話は先に進みませんから。これから先長い年月の間にはきっと何度かバブルや暴落を経験することがあると思います。バブルは後からわかることなので、その時に売るのは難しいですし、暴落の時に買うのも怖いもので、どちらも簡単ではありませんが、何度か経験すれば多少は慣れるものです。あわてずに相場の流れを味方につけるつもりで、うまくつきあっていけるようになるといいですね。